平成20年度の安全重点施策

 平成28年度は、5年を期限とする『中期安全推進計画』(平成24年度〜平成28年度)の最終年度として、平成27年度までの取り組みの深度化を図るとともに、平成27年度に発生した事故や故障等の原因分析に基づく対策を徹底し、『平成28年度 安全推進計画』の重点実施項目を着実に実施することで、目標達成に向け全社員が一丸となり取り組みました。

  主な「ハード対策」

1 誤出発防止対策

 平成27年12月31日、高徳線オレンジタウン駅において、列車が赤信号で出発し安全側線の終端をこえ脱線する事故が発生しました。このため、平成28年度はこれまで実施してきた安全側線が設けられていない箇所の誤出発防止対策を強化するとともに、安全側線が設けられている箇所についても、誤出発防止対策(誤出発防止用ATSの設置等)を新たに実施しました。平成28年度はオレンジタウン駅を含めて2駅で対策を行い、さらに平成29年度にかけて19駅で計画しています。
 今後も、誤出発による列車衝突事故及び列車脱線事故を防止するため、誤出発防止対策を計画的に推進していきます。

2 車両の安全対策

■ 運転士異常時列車停止装置
 列車に乗務している運転士に疾病等の異常が発生し、運転操作が継続できなくなった場合に自動的に列車を停止させる装置を設置しています。平成28年度末までに、整備対象車両369両のうち354両(整備率96%)の設置が完了しました。
■ 運転状況記録装置・誤通過防止支援装置
 平成18年7月の省令改正に伴い、列車の運転速度やブレーキ操作等の運転状況を記録する装置の設置が必要であるため、『運転状況記録装置』を開発し順次設置しています。
 また、停車駅通過等を未然に防止する機能を持たせた、『誤通過防止支援装置』も併設しています。平成28年度末までに、整備対象車両369両のうち322両(整備率87%)の設置が完了し事故防止に役立てています。

3 災害防止対策

■ 強風
 本四備讃線など、台風や季節風などで運転を規制する区間に列車を停車させない取り組みとして、平成24年8月より『風予測システム』を導入し、早め規制により安全安定輸送に努めています。
■ 大雨
 台風等による大雨の対策として、のり面(山を切り取った斜面・土盛でできた斜面)の状態を定期的に点検するほか、のり面を安定させるため、点検結果をもとに「のり面防護工」を施工しています。平成28年度は予讃線1箇所、土讃線4箇所、牟岐線1箇所の計6箇所を施工しました。
■ 落石
 落石に対する対策として、危険箇所を定期的に点検するほか、落石検知装置や落石に備える落石止柵、落石防止網を順次施工しています。平成28年度は予讃線1箇所、予土線2箇所、土讃線1箇所の計4箇所を施工しました。
■ 地震
 大規模地震対策として、鉄道橋や高架橋に耐震対策を実施しています。道路等と交差する鉄道橋や高架橋に対し、落橋防止を目的とした耐震対策を平成8年度から順次行っており、これまでに施工を完了した落橋防止対策箇所は41箇所となりました。また、本四備讃線における耐震補強は、平成26年度末から工事に着手し、桁の落橋防止対策、高架柱や橋脚に対する耐震補強等を順次実施しています。
 駅設備では、四国DCの開催にあわせて平成28年度に琴平駅の耐震補強工事を実施し、平成29年度においても計画的な鉄道橋や高架橋柱の耐震対策の実施を予定しています。また、平成21年3月1日より、気象庁が情報提供している緊急地震速報を活用した『早期地震警報システム』を導入しています。地震発生前に揺れが予想される区間を走行している列車に対し、列車無線装置で自動的に緊急停車を指示するもので、列車無線装置の未整備線区では携帯メール機能を活用しています。システム導入前までは、地震が発生してから列車を停止させていましたが、現在は地震が到達する前に列車の停止手配を行うことが可能となりました。
■ 津波
 近い将来、高い確率で発生が予想される南海トラフ地震による津波に備え、各自治体のハザードマップを参考にして、線路の浸水が予想される区域に「津波浸水予想区域標」を設置しています。また、線路の浸水が予想される区域を走行中、運転席に設置してある『GPSトレインナビ』に“津波浸水区域走行中”を表示させることで、運転士に注意を促し、“もしもの時”の迅速な対応に役立てることとしています。
 さらに、平成23年3月11日に発生した東日本大震災後に各自治体が定めたハザードマップを基に、津波浸水予想区域の見直しと避難マップの作成を行いました。現在は、自治体の見直しに合わせて適宜情報の更新を行っています。平成28年3月には、線路内からの避難出口を示す方向標や指定避難場所への避難経路を示す標識の設置を完了しました。

4 踏切等の安全性向上対策

■ 踏切支障報知装置等の整備
 JR四国には、平成28年度末現在で1,322箇所の踏切があります。第1種踏切(警報機・遮断機のある踏切)は1,206箇所あり、全踏切数の91%を占めています。また第1種踏切数の76%に当たる915箇所に『踏切支障報知装置』を整備し、このうちの82箇所に『障害物検知装置』を併設しています。これらの整備については、今後も計画的に進めていきます。

■ 踏切警報機(赤色灯)の視認性向上
 踏切の安全性向上対策として、踏切警報機(赤色灯)の視認性を向上させるため、警報灯の両面化や全方向踏切警報灯の導入にも取り組んでいます。踏切遮断桿折損が多発している踏切などから計画的に進めています。
■ 踏切道の整備等
 踏切の事故防止対策として、平成28年度は道路事業に合わせ踏切拡幅工事を3箇所で実施しました。

 第3種踏切(警報機があり遮断機のない踏切)と第4種踏切(警報機・遮断機のない踏切)については、道路交通量、鉄道交通量、踏切環境等を勘案しながら効果的かつ計画的に廃止又は第1種踏切(警報機・遮断機のある踏切)への改良等を進めています。

■ 踏切内ペイント
 踏切内で「とりこ」になり、事故に至るケースが多く見受けられることから、“踏切内「停車禁止」の意識付け及び踏切視認性向上”を目的に、ドライバーに注意を促すための踏切内ペイント(レンガ色の塗色)を実施し、平成28年度は12箇所の踏切に施工しました。今後も、順次計画的に実施していきます。
■ テレビCM放映による踏切事故防止啓発活動
 春・秋の全国交通安全運動に合わせ、四国各県でテレビCM(「脱出編」と「列車防護編」)の放映を行いました。また、運転免許センターや自動車教習所に依頼し、啓発用DVDの放映も実施して踏切安全通行と踏切内でトリコになった場合の脱出方法等の啓発活動に役立てました。
■ さく場道の安全対策
 踏切以外で人が横断している「さく場道」については、防護柵及び通行禁止看板の設置を行うことにより、鉄道人身事故の防止を図っています。平成28年度は予讃線11箇所、高徳線1箇所、土讃線10箇所、徳島線5箇所、牟岐線2箇所の計29箇所で設置等を行いました。
■ 連続立体交差化事業
 都市計画事業に伴う連続立体交差化事業については、高徳線栗林駅に続いて予讃線丸亀駅及び今治駅、高徳線佐古駅、予讃線坂出駅、土讃線高知駅が順次完成しています。
 また、平成22年度から予讃線松山駅付近高架化工事に着手し、約2.4kmの区間を高架化することにより、8箇所の踏切が廃止され18箇所の道路と立体交差することとなります。

5 列車からの緊急避難支援装置の整備

 異常時等で列車がホームのない場所に停車した場合、お客様には安全・迅速に列車から降車し、避難していただく必要があります。そのための支援装置として、「避難用シューター」を開発し「手すり付非常用はしご」とともに、計画的な整備を進め牟岐線と土讃線を運転するワンマン列車全てに搭載しました。

  主な「ソフト対策」

1 ヒヤリハット運動

 重大な事故の発生を未然に防ぐ取り組みとして、平成18年8月から「ヒヤリハット運動」を推進しています。
 この運動では、作業中にヒヤリまたはハッとした事象(ヒヤリハット体験)や、安全に関して気付いた事象(安全に関する意見)などを収集し、社員全員で共有することにより事故防止に繋げています。
■ 「ヒヤリハット運動」の深度化
 平成28年度は、ヒヤリハット事象のリスク管理を目的にヒヤリハット管理様式を導入しました。リスクが高いヒヤリハット事象については、本社内で共有し対策の有効性の確認や水平展開を推進しています。
 「ヒヤリハット運動」導入時からの報告件数は堅調に増加し、近年は年間3,000件程度で推移しています。今後は、報告内容の評価による報告の質的向上を推進すると共に、事例集の作成など情報収集の向上と活用にも注力していきます。
■ ヒヤリハット貢献賞
 ヒヤリハット運動の更なる活性化を目的として、「ヒヤリハット貢献賞」を各職場に授与しています。平成28年度は、15件の「ヒヤリハット貢献賞」を授与しました。
【改 善 事 例 その1】
概況:
規制杭のある踏切に軽トラックが進入して落輪し、踏切を支障する事故が発生しました。
これに対する対策として、道路管理者の自治体と対策を協議し規制杭の増設を実施しました。
【改 善 事 例 その2】
概況:
夜間作業中に危うく川に落ちそうになり、ヒヤリとしました。この場所は、夜間作業の時に頻繁に通るため、直轄工事により転落防止対策を施工しました。

2 リスクアセスメント

 リスクアセスメントは、職場に潜在するハザード(危険源・有害源)を探索し、その発生頻度や発生した時の影響などから対策の優先順位を判定する方法のことで、事故の未然防止活動の一つです。
 当社では、すべての系統でリスクアセスメントに取り組んでいます。普段の業務でのヒヤリハットに加えて、ミスが起こりやすい場面と言われる「初めて」「久しぶり」「変化」の場面でのリスクを洗い出し、評価することで、リスクの大きさに応じた対策を講じるようにしています。

3 安全シンポジウム

 鉄道事業者にとって、「安全の確保」は事業運営の根幹であるとともに、すべてに優先する最重要課題です。
 この安全意識を更に高揚させる目的で、平成29年2月24日『第10回安全シンポジウム』を社員及びグループ会社社員並びに四国運輸局、四国の各鉄道会社の方にも参加を頂くなど、約120名が出席し開催しました。
 シンポジウムでは、各職場で取り組んだ事例紹介や九州旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部副本部長兼安全創造部長による「熊本地震の対応とJR九州の安全の取り組みについて」の特別講演が行われ、輸送関係事業者にとって永遠の課題である防災と減災への取り組みについて貴重な講演をいただき、更なる安全意識の醸成を図りました。

4 安全教育

 JR四国には、『研修センタ−』という教育の専門施設があります。この研修センタ−では、各種研修についての講座を開設しており、駅係員、乗務員、指導者及び専門技術者等、新人社員から幹部社員までの幅広い研修を実施しています。特に、鉄道係員に最も重要な安全に対する意識や職責の重大性、異常時における迅速で的確な判断力の教育など、安全教育を中心とした各種教育・訓練などを実施しています。
 また、平成22年10月から更なる安全・事故防止の一環として、同研修センタ−内に「鉄道事故展示室」を開設し、国鉄時代からの重大鉄道事故14件及びJR四国管内で発生した大きな輸送障害について、当時の新聞記事や事故概況、対策の取り組みを展示・掲出し、安全意識の醸成に役立てています。

5 職場内での教育訓練

 研修センタ−で実施する集合教育とは別に、各職場内において職場内教育を実施しています。
 車掌・運転士の教育は、全乗務員を対象とした「定例訓練」「業務研究会」を実施するとともに、特に運転士においては、車両故障や踏切事故などの異常時を再現できる「乗務員訓練シミュレ−タ」を導入し、臨場感ある状況の中で業務知識・技術の習得に取り組んでいます。
 また、乗務員以外の社員の職場内教育については、異常時の取扱方及び復旧訓練、若手社員の技術力向上並びに技術継承等を目的とした講習会・競技会などを開催するとともに、各職種間の連携強化等を図る目的で運転士・車掌・駅・指令等による合同訓練会なども開催しています。

6 異常時対応訓練

■ 総合事故対策訓練
 列車脱線など、大規模な事故を想定し警察、消防等関係機関の協力を得て、各系統の社員が合同で行う総合事故対策訓練を毎年1回実施しています。平成28年度は11月22日に高知運転所構内で行い約300名が参加しました。訓練では列車防護の処置、消防や関係社員等との連携、油圧ジャッキによる脱線車両の載線訓練、線路復旧訓練、お客さま対応訓練などを実施しました。

■ 異常時列車取扱訓練会
 駅関係の新任・若手社員等を対象として、職場単位(管理駅単位)の11駅において、異常時を想定した運転及び機器等の取扱訓練である異常時列車取扱訓練会を毎年実施しています。
 関係箇所の協力を得ながら、できるだけ実場面に近い状況を設定することで、より実態に即した訓練を実施し、異常時対応能力の向上を図っています。
■ 地震・津波避難誘導訓練
 地震が発生し大津波警報が発表された場合を想定し、『地震・津波避難誘導訓練』を平成17年度から行っています。
 平成28年度は5月24日 鳴門線金比羅前駅〜教会前駅間と、11月2日 土讃線須崎駅構内でそれぞれ実施し、列車にご乗車のお客さまや駅のお客さまを、安全・迅速に指定避難場所まで避難誘導させる方法・案内方の訓練を実施しました。
 社員のほか、四国運輸局、周辺自治体、地元警察署・消防署等から関係者延べ約300名が参加し実施しました。
■ トンネル内列車火災発生時の避難誘導訓練
 トンネル内で列車火災が発生し、トンネル内で停車したという想定で、平成28年9月9日の深夜、内子線五十崎トンネルで火災発生時の避難誘導訓練を実施しました。トンネル内で列車火災が発生し、動けなくなった列車から運転士と車掌が協力し、お客さまを車外に避難誘導しました。また、警察や消防との情報伝達や救助活動の訓練も併せて実施しました。
■ 本四備讃線 異常時取扱訓練
 瀬戸大橋線の橋梁上で車両故障等が発生し停車したという想定で、平成28年10月7日の深夜から早朝にかけ、本四備讃線異常時取扱訓練を実施しました。今回の訓練では、走行できなくなった上り線の列車に、下り列車を横付けし非常用渡り板でお客さま救済を実施しました。また、宇多津駅までの退行運転や駆け付けたお客さま対応班のお客さま対応などの訓練を実施し、本四備讃線での異常時対応能力の向上に取り組みました。
■ ナイス訓練賞
 平成24年4月より、各職場の自主的な異常時訓練等の活性化及び異常時対応能力の向上を推進する目的として、『ナイス訓練賞』を新設しました。各職場が独自の創意工夫により実施した異常時訓練(お客さま対応訓練を含む)などであって、その内容が安全推進委員会等で紹介された中から、社長及び鉄道事業本部長が他箇所の模範と認めたものに授与することとしています。
 平成28年度は、5箇所の取り組みに対し表彰を行いました。

  安全を支える人材の確保

 安全確保のためには、鉄道固有の知識・技術の維持・継承を図るとともに、安全・事故防止に関する教育・訓練に取り組むことが重要と考えています。また、技術断層を防ぐための計画的な新規採用の実施や、退職者を活用した技術継承にも取り組んでいます。

  安全関連設備投資

 鉄道施設の整備については、老朽設備の取替えを計画的に進めるほか、安全で安定した輸送の確保、旅客サービスの改善、業務の効率化等に必要な投資を計画的かつ重点的に実施しています。